「契約をする際に注意すべきことは?」
「代理店契約をする時って、どんな関係性になるの?」
「契約内容に丙(第三者)が入ってきたけど…」
業務をしていると、第三者が非常に密接に絡んでくる契約というものが存在します。
しかし契約というのは根本的には当事者、
つまり契約書に名前を記入し、印を押した人同士の話になります。
第三者が関係している契約の場合、当事者だけで契約を進めると、知らず知らずのうちに第三者に影響を与えてしまいます。
第三者が関係してくる契約って?
それでは具体的に、第三者が関係してくる契約とはどのような内容なのでしょうか。
➀転貸
たとえば、
Aが特製アイスクリームを作る機械をBに貸していて、
BはそれをさらにCに貸している。
いわば、転貸のようなパターンです。
AはBを信頼し、「Bが貸したいというのなら」ということでCへの転貸も承諾しています。
②名前を貸す【名板貸】
こちらも賃貸や転貸とほぼ同じですが、名前を貸してしまう、つまりはお店のブランドごと貸してしまうということがあります。
ラーメン界隈ではよくある○○家とか、〇郎とか、そんな感じのやつですね。
「お前も立派になった。もう俺の店の名前、継いでいいぜ。好きなところで店を開きな」
という感じで、同じ名前でお店をやっていたりします。
そして独立した弟子が新しい弟子を育てて、孫のような店がどんどんと増えていきます。
気づけば、日本中に〇郎だらけ! そんな感じのお話です。
第三者が絡む契約のなにが問題なのか?
こうしてみると、ひとつの契約から様々な契約につながっているパターンは世の中意外と多いです。
しかしこれには意外な落とし穴があります。
モノを貸している場合
さきほどの章の➀のように、転貸している場合を考えてみましょう。
まず、AとBが喧嘩をして契約を解除した場合、BとCの関係はどうなるのでしょうか。
普通に考えれば、Cがソフトクリーム機を使用し収益を受ける権利は、Bから借りていることに由来します。
そして、Bの権利はAから借りていることに由来します。
ですからAB間の元の契約が切れたら、BC間の関係も消滅するのが原則論ですよね。
書面で明示しておいた方がベター
しかしそれはある程度法的な思考ができている場合の話です。
普通にCの立場から考えると、
「自分は全然関係ないのに、突然機械を返せと言われた…」
という気持ちになると思います。
私なら、怒ってしまうと思います。笑
ですから、AでもBでも、そういった権利関係が変動しそうなことはあらかじめ書面でCに通知しておいた方がいいでしょう。
契約関係を円滑に進めるためには、そういった一工夫は結構大切です。
こちらも確認:業務委託契約書はなくて大丈夫?
【名板貸責任】ブランドが関わってくる場合は要注意!
次は②、〇郎のような、ブランドが関わってくる場合です。
名前には責任がある
契約書で最後にすることは「名前を書いて、印を押す」ということです。
つまり、名前には責任があるのです。
同じ名前で商売をしていると、危険? 名板貸
〇郎 横浜店 と 〇郎 品川店
同じ名前で商売をしているとします。
事情を知らないお客様は、「どっちも経営母体が同じなんだな」と勘違いしてしまいそうな気がしませんか?
名板貸は商号だけど…
こういう同じ名前で商売をしていて、それで損害が発生したとき、
名前を貸した人も責任を負うことになります。
それを法律用語で【名板貸】と言います。
ただ、名板貸は「商号」、つまり屋号ではなく登記されている元の会社名の利用を承諾した場合、と言われることが多いです。
セブンイ〇〇ンはたくさんありますが、セブンイ〇〇ンだからといって、
全セブンイ○○ンに対して本社が責任を負うのは確かに大変でしょう。
解釈によって変わることもある
ただ、それも解釈によって変わることがあります。
確かに「全部のセブンイ○○ンの経営母体が同じ」と信じる人は珍しいでしょう。
フランチャイズでやってるな、と思うことが当たり前になっているからです。
しかし解釈によっては、〇郎 横浜店 と 〇郎 品川店 の運営会社が別でも、
「名前を貸して、他の人を混乱させた以上は、責任を持ってください」と言われる可能性があります。
気を付けることに越したことはありません。
仮に、「〇郎 三代目」という孫の代まで責任を負うとしたら、
本当に大変なリスクになってしまいます。
名板貸など、多角的かつ「もしも」の視点から契約を考える
契約の話となり、契約書を作ると自分と契約相手のことばかり考えてしまいがちです。
しかし契約とは社会的な行為であり、その効果は様々な方向に広がります。
一度、契約を交わす際、契約書を作る際、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。