契約書は当事者間の取決めですので、別に特段専門家に頼まなくても自身で作成し、それによって有効に契約を成立させる(というよりも成立を証する)ことが可能です。
けれども、契約書を自身のみで作成することはそれなりの危険性を伴います。
法的知識がないと思わぬ方向性に行くことがある
契約書で定められていないことは、民法や商法、場合によっては民事訴訟法などの関連法によって処理されることになります。その際、契約書に定めていないと面倒になることがあります。
例:管轄裁判所
管轄裁判所とは、その契約で裁判をするに際して担当する裁判所ですが、こちら民事訴訟法で原則として「被告の住所地を管轄する裁判所」とされています。
たとえば東京の会社が大阪に住んでいる人と契約を交わして、その契約に関する裁判になった際、大阪の裁判所で訴訟という形になるのです。
これだと交通費などが大変ですし、手間もかかります。
ですから、これは契約書で自分の住所地の近くの裁判所等にするのが一般的です。
例:名板貸
自分の商号を貸してあげる契約というものが存在します。
しかしその契約内容を知らない人から見ると、同じ経営母体に思えてしまいます。
ですから、商号を貸した場合、その借りた人が起こしたことについても責任を引き受けることになります。
他人の責任を背負う、ということで非常に危うい行為となります。
こちらも契約をする前に確認し、契約書で対応策を練る必要があります。
専門家目線からリスクヘッジができる
業務の性質上、行政書士などの専門家は心配性な人が多いです。
行政書士は常に法律と向き合っていて、ひとつのミスで権利義務が大きく変動してしまう世界です。
「これをしたらこの結果になる」という思考が叩き込まれています。
つまり、客観的なリスクを認識し、それに対して対応策を事前に打つことができるのです。
例:第三者が絡む契約
第三者が絡む契約というものが存在します。
たとえば、賃貸人A ⇒ 賃借人B ⇒ 転借人C という構図です。
この際、AB間で取決めをしていても、Cのことが考慮されていないことがあります。
AB間で契約解除した際に、Cから物を返してもらう際、その原状回復の費用は誰が負担するのか、というようなことです。
のちのちのトラブルを回避するためにも、こうしたより包括的な事態を考えておく必要があります。
例:契約解除の想定
契約解除の条件は、契約書には必須となります。
その中には、「乙(取引先)が支払いをできなくなった又は役務を提供できない等の場合」というように常に「相手がどうするか」ということに気を取られてしまう人は少なくありません。
しかし現実には、自分の体調が悪化して、もう契約を解除したいということもあると思います。
そういった相対的な視点がないと、「自分の都合で契約をやめたいのに、任意の解除条項や解除の条件に該当しないからトラブルになってしまった」ということにもなりかねないのです。
専門家に確認だけでもしてもらうとよい
契約書を作成する際に、やはり最後の確認だけは行政書士あるいは弁護士などの法律専門職の人に確認してもらうとよいでしょう。
業務の内容を一番わかっているのは事業者本人ですから、自分で作成することは非常にいいことだと思います。
しかしそれでは思わぬトラブルに対応しきれないこともありますし、契約内容によっては法律上無効になってしまう部分も出てきます。
確認くらいは専門家に任せてしまったほうがよいかもしれませんね。