
「卒業まで少しだけど、まだ就職先が決まっていない」
「在留カードの期限は残っているけれど、不法滞在にならない?」
「どんなことに注意すればいいのだろう?」
3月に大学や専門学校を卒業し、在留カードの有効期限は5月まで残っている――。
このようなケースでよくあるご相談が、
「卒業後でも“留学”ビザは有効ですか?」
「4月や5月に“技術・人文知識・国際業務”へ変更申請できますか?」
というものです。
入管実務を扱う立場から、法的整理と実務上の注意点を解説します。
卒業後の「留学」ビザは有効なのか?
まず、重要な理解として、卒業した後の「留学」ビザはどうなるか、ということを考えていきましょう。
留学ビザの内容
在留資格「留学」は、学校教育法に基づく教育機関で教育を受ける活動を目的とする在留資格です。
この在留資格を所管しているのは、出入国在留管理庁です。
詳しくはこちら:出入国在留管理庁 在留資格「留学」
結論、日本に残ることはできるが…
在留カードの有効期限が残っている限り、形式上は在留資格は有効です。
ただし、重要なのはここからです。
在留資格は「在留期間」だけで判断されるものではなく、
“許可された活動を継続しているか”という実態が極めて重要です。
実際は、あまりだらだらできない
3月に卒業すると、
- 学校への在籍が終了
- 教育を受ける活動も終了
つまり、「留学」の本来活動は終わっています。
したがって、
卒業後も期限が残っている=自由に滞在できる
という理解は危険です。
実務上は、速やかに次の在留資格へ移行することが前提となります。
そう、たとえ残りの在留期間が半年等長い期間あるとしても、
だからといって、何もせずにいたら、次の資格に変更できなくなる可能性がどんどんと高まります。
つまり、就職しても日本にいられなくなる可能性が高くなっていくのです。
卒業後に資格外活動でアルバイトはできるのか?
外国人学生はよく、アルバイトの資格である「資格外活動許可」を手に入れて、
アルバイトにも勤しんでいることが多いです。
卒業後、生活はどうするのか?
中には、アルバイトである程度生計を立てている人もいます。
しかし、実は、資格外活動許可(アルバイトの許可)は、「留学生として勉強を頑張る」ことを前提に許可されています。
ですから、留学生でなくなった場合はどうなるのか? という問題が生じます。
在学中に取得していた「資格外活動許可(週28時間以内)」。
卒業後もこの許可は有効なのでしょうか?
原則は認められないと考えよう
卒業後は“留学”としての本来活動が存在しないため、資格外活動も認められないと解されるのが基本です。
先ほど書いたように、資格外活動許可は、
「留学」という本来活動があることを前提に、その“例外”としてアルバイトを認める制度
だからです。
こちらも読みたい:資格外活動許可。なぜコンビニには外国人店員がたくさんいるのか?
卒業して教育活動が終了している以上、
その前提が崩れているという整理になります。
実際には意外といるが、「やらない方がいい」
実務上は、
- 卒業直後に短期間アルバイトを継続しているケース
- 就職先決定までの間に働いているケース
も見られますが、これはグレーな状態と言わざるを得ません。
特に、
- フルタイム勤務
- 28時間超過
- 就労系職種での実質的本格勤務
などは、将来の変更申請に悪影響を及ぼす可能性があります。
一度、このような違法状態になってしまったら、のちの永住許可にも響いてきます。
卒業後でも、「技術・人文知識・国際業務」への変更申請は可能か?
3月に卒業し、在留期限が5月まで残っている場合を想定します。
これに関しては、期限内に変更申請をすれば手続は可能です。
(というか、弊所の判断でそう思っています)
重要なのはカード上の在留期限
期限までに申請すれば、大きな問題にはなりません。
もちろん、
「卒業後は何をしていたのか?」
「なぜ卒業までに就職ができなかったのか?」
等々の説明は必要になります。
これは後述するように「理由書」という書面を作ってそこで丁寧に説明をしていくことになります。
実務上は、卒業後、3ヶ月以内に変更申請をかけよう
とはいえ、いつまでもだらだらとしていてはいけません。
実は、
「多少はいいけれど、3ヵ月以上、認められた活動をしていないと、ビザを取り消すことができる」
という決まりがあります。
今回は3月卒業、5月が在留期限ですのでそれほど問題になりませんが、
仮に3ヵ月以上何もしていない場合は、もう変更申請ができなくなると思った方がいいでしょう。
つまり、もう就職ができず、日本から帰らないといけなくなるということです。
こちらも読みたい:在留資格の取消?どんなことが問題になる?
ぎりぎりの変更申請でも大丈夫
在留期限満了前に申請を行えば、
結果が出るまでの間は特例期間として適法に在留できます。
(いわゆる“2ヶ月特例”)
ただし、ここでも注意点があります。
この件における実務上の注意点
こういった特殊なケースにおける注意点を確認してみましょう。
① 申請はできるだけ早く
卒業後に活動実態がない期間が長くなると、
- 「なぜすぐ申請しなかったのか」
- 「在留目的は何だったのか」
といった疑義が生じる可能性があります。
理想は4月中の申請です。
5月ギリギリは避けるべきです。
② 変更許可前のフルタイム勤務は不可
変更許可が出るまでは「留学」のままです。
したがって、
- 正社員としてフルタイム勤務
- 就労ビザ前提の業務従事
は原則できません。
企業側と入社日の調整が必要になるケースも多いです。
生活するお金の問題も、人によっては出てきます。
③ 学歴と業務内容の関連性
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、
- 専攻内容
- 職務内容
- 業務の専門性
の整合性が審査の中心です。
特に、
- 文系卒業 → 技術職
- 専門学校卒 → 業務内容が曖昧
といったケースでは、説明不足で不許可になることも多いです。
実際、今、この「技術・人文知識・国際業務」の審査は、厳しくなっています。
行政書士に依頼するメリット
ここが実務上、非常に大きなポイントです。
① 理由書の設計力
単に書類を出すだけでは足りません。
審査官が見るのは、
- なぜこの業務が「技術・人文知識・国際業務」に該当するのか
- 学歴や経歴との関連性
- 企業の安定性
- 報酬の妥当性
これらを論理的に整理した理由書が、許可率に大きく影響します。
入管業務を日常的に扱う行政書士は、
審査実務の傾向を踏まえた構成が可能です。
② 書類作成のスピード
卒業直後は時間との勝負です。
- 卒業証明書
- 成績証明書
- 雇用契約書
- 会社資料
これらを迅速にチェックし、不足書類を指摘できるかどうかは重要です。
経験が浅いと、
「何を準備すべきか」から迷ってしまいます。
さらには、翻訳書という壁も存在します。
③ 不許可リスクの低減
不許可になると、
- 再申請
- 在留期限との兼ね合い
- 企業側への説明
など、リスクが一気に増大します。
最初の申請をどれだけ精度高く組み立てられるかが重要です。
卒業後は、早く、正確に、在留資格変更申請を
卒業後の「留学」ビザを整理すると、
- 形式上は在留期限まで有効
- しかし活動実態は終了している
- 早期の変更申請が前提
ということになります。
また、そうなった場合に付随する問題として、
- 卒業後の資格外活動は原則認められない
- 変更許可前のフルタイム勤務は不可
- 学歴と業務の関連性が審査の核心
これらを理解しておく必要があります。
卒業シーズンは、毎年多くの留学生が同様の状況に直面します。
しかし、適切に整理すれば、問題なく次の在留資格へ移行できます。
制度の理解と実務運用の差が結果を左右する分野だからこそ、
専門家の関与が必要不可欠です。
もし、お悩みだったら、お気軽に弊所にご連絡ください。