
「日本支店を作りたい」
「母国から日本の現地法人に投資をしたい」
「日本で作った会社の役員を変更したい」
昨今、多い相談に「日本の支社を作る」ことや「日本支社の役員になりたい」というお話があります。
特に日本の場合、法人設立をする際に、印鑑証明が必要になるため、
いわゆる「居住していないといけない」というハードルがあります。
そのため、先に、
① 外国から日本に社員を派遣
② そこで代表取締役にして、法人設立
③ 代表者が経営管理ビザを取得
④ のちほど、外国法人による株式過半数の買取(子会社化)
という流れが多くなっています。
こちらも読みたい:外国人が役員になるなら、ビザはどうするか?
しかし、外国からの株式の買取は無条件には認められていません。
ここで必要となる手続きが「外為法による対内直投命令」です。
本コラムでは、行政書士の立場から、対直規制の基本・必要な届出・手続きの流れ・注意点をわかりやすくまとめます。
当事務所では、日本銀行のオンライン申請システムにも完全対応しており、外国投資家の皆さまの代理申請をサポートしています。
対内直投命令とは? 外国企業・外国人が日本企業へ投資するには…
対内直投命令とはいったいなんのでしょうか。
大枠を解説していきます。
国内の産業、安全を保護するための制度
対直命令の正式名称は、外為法(外国為替及び外国貿易法)による「対内直接投資等に関する命令」といいます。
そして、その命令の中で、届出制が課されているのです。
これは実は、私たちの身の安全、国家の存続を目的としたもので、非常に重要な命令です。
たとえば、以下のことを想像してみてください。
- 銀行や仮想通貨の会社の株を敵対する国に買われてしまい、私たちの資産状況に危機が生じる
- 通信インフラや食品など生活に不可欠な部分を、外国会社や外国人が投資で支配している
- 武器や兵器、サイバーセキュリティなどの国防に関する会社を敵対する国が買ってしまった
これらは私たち一般人でも、「非常にまずい」ということがわかります。
一部の企業や事業は、もはや生活に必要不可欠なインフラとして存在しています。
ですから、それに対して、外国が影響力を持つと、日本人として大きな脅威になりえます。
そのため、この「対直命令」によって、外国からの投資には一部フィルターをかけて、仮に危ないものがあればすぐに発見できるようにしているのです。
特に保護すべき業種を指定している
日本へ投資する外国企業・外国人投資家が年々増えている中、外為法(外国為替及び外国貿易法)による「対内直接投資(対直)」の届出が重要性を増しています。
特に、防衛・エネルギー・通信などの「指定業種」への投資は、事前届出が義務となるケースが多数あります。
特に保護が必要な業種を「指定業種」、そしてその中でもさらに重要なものを「コア業種」として定めています。
また、事前届出が必要なくとも、原則的に事後の届出は必要になります。
罰則もある制度
実は、この制度に違反した場合の罰則は、結構重いです。
制度内で様々な届出があるため違反の内容によってまちまちですが、
個人なら「3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」、法人の場合だと「数千万~1億円以下の罰金」という可能性もあります。
さらには調査票を書く羽目になり、「最初からちゃんと届出をしていた方がよかった…」となることは間違いありません。
外為法で規定される対内直接投資とは、どんな行為?
対内直接投資とは、外国人や外国法人が日本企業に以下のような行為を行うことを指します。
- 日本企業の株式・持分の取得
- 役員への就任
- 事業の承継
- 事業譲渡の受領
- 既存株主からの株式譲受
- その他、日本企業の経営に影響を及ぼす一定の行為
基準は影響力を持つか否か
特に議決権1%以上を取得する場合には届出が必要となる可能性があります。
議決権1%を持つと、会社法の規定により以下の行為ができるようになります。
- 株主総会における議題の提出(会社法303条)
- 株主総会で提出する予定の議案を事前に通知することを要求(会社法305条)
- 株主総会の招集手続き等について検査役を選任するよう要求(会社法306条)
この中でも特に重要なのは、赤字の議題提出権です。
たとえば、役人の解任を提案し、経営に支配力を持つことができるようになります。
事前届出が必要となる「指定業種」とは?
さきほども述べたように外国投資家の投資が、
日本の安全保障や国民の生活に影響を及ぼす恐れがある場合、外為法によって規制されています。
それらのものは「指定業種」として、制度内で告示されています。
主な指定業種の例
- 防衛
- 原子力
- 電気・ガス
- 水道事業
- 農作物、食料
- 通信
- 情報処理、ソフトウェア
- 運輸(航空・鉄道 など)
- 医薬品(特にバイオ・ワクチン関連)
これらの業種に関わる企業へ投資する場合、投資前に経済産業省への事前届出が必要となります。
【実際の事例】情報処理、ソフトウェア
弊所の実感として実際によくあるのが、ソフトウェアや通信関係です。
実はこの対内直投命令、多くの場合は投資を請け負う会社の方で代行してしまいます。
つまり、ある程度大きな会社の株を買う際には、それほど問題になりません。
しかし、非公開の小規模な会社は、自分たちでこの手続きをする必要があり、そこで「どうすればいいかわからない」ということで行政書士事務所に相談が来ることがあります。
そして、弊所が横浜~東京近辺の事業者とつながっていることが多いためか、ほとんど「ソフトウェア」、「AI」、等々比較的新しい業務が、この「指定業種」にかかるのでは? と相談されます。
結論的には、ソフトウェア業は指定業種ですので、対内直投命令の事前届出が必要です。
ご自身でわからない場合は、専門家に相談してみましょう。
弊所もメールや電話等さえできれば、どこでも対応が可能ですので、弊所にご相談くださっても大丈夫です。
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さらにある。コア業種とは?
さらにコア業務というものがあります。
指定業種の中でも、特に安全保障性の高い分野として位置づけられています。
つまり、〈指定業種の中でも更に指定された業種〉ということになります。
外国投資家が実質的支配力を持つことを強く制限され、届出内容も詳細に審査されます。
主なコア業種の例
- 防衛産業
- 原子力
- 重要インフラ(電力・ガス・水道)
- サイバーセキュリティの中核サービス
- 特定の高度技術分野
コア業種への投資は、単に持ち株比率だけでなく、
投資家が経営に影響を与える取引・契約を結ぶ場合にも規制対象になりやすい点が特徴です。
【実務上の注意点】ソフトウェアの中のコア業種
実は、弊所がよく担当するソフトウェアも、コア業種に指定されているものがあります。
どのようなものがいわゆる「コア業務」に該当するのか、イメージしやすいように見ていきましょう。
番号は、コア業務に関する告示における業務の番号です。
四十三(サイバーセキュリティ関連ソフトウェア・サービス)
対象:情報処理サービス業、ソフトウェア業、インターネット利用サポート業など
コア業務の内容
- サイバー攻撃や不正アクセスに対応するための監視・防御サービス
- システムやソフトウェアの脆弱性診断サービス
- デジタル・フォレンジック(証拠保全、調査、分析)
- 遠隔からの端末管理やセキュリティ制御サービス
- セキュリティ対策用ソフトウェア(ウイルス対策やフィッシング防止など)
- 日本語入力ソフト(クラウド変換型)の提供
要するに「サイバーセキュリティやシステム保護に特化したソフトウェアやサービス」の提供が中核。
四十四(重要インフラ・規制対象分野向けソフトウェア)
対象:受託開発、組込み、パッケージ、情報処理サービス、ネットサポート業など
コア業務の内容
- 電気・ガス・水道・通信・半導体・エネルギー等の重要インフラや指定業種に関わるシステムのために特別設計されたソフトウェアや情報処理サービスの提供
要するに「電力・ガス・通信・半導体など国家的重要分野を支える専用システムソフトやサービス」の開発・運用。
四十五(大規模個人情報処理ソフトウェア)
対象:受託開発、組込み、パッケージ、情報処理サービス、インターネットサポート業など
コア業務の内容
- 100万人以上の個人情報を扱うための専用プログラム開発や処理サービス
- 特に金融機関(銀行、保険会社、証券会社など)で利用される個人情報管理システムの開発・運用
要するに「大規模な個人情報(特に金融関連)を安全に扱うためのソフトウェアや処理サービス」の提供。
対直の事前届出が必要かどうかの判断
投資内容によって「事前届出・事後報告・届出不要」が分かれます。
この際、事前届出が必要な場合は、審査もあるので注意が必要です。
手続き区分の目安
| 投資行為 | コア業種 | 指定業種 | 非指定業種 |
|---|---|---|---|
| 株式を1%以上取得 | 原則事前届出 | 事前届出 | 多くは事後報告 |
| 役員就任 | 原則事前届出 | 事前届出 | 事後報告 |
| 契約による経営関与(業務提携など) | 原則事前届出 | ケースにより必要 | 原則不要 |
| 支配権取得(1/3・1/2超え等) | 厳格審査 | 審査対象 | 事後報告 |
判断は非常に複雑で、投資家の国籍・投資スキーム・持株比率・業種などを総合的に見る必要があります。
対直の届出手続きの流れ
外為法の対直届出は、経済産業省宛になります。
しかし、最初は日本銀行が窓口となっています。
現在は日銀のシステムに登録すれば、オンライン申請が可能で、当事務所ではすべての申請をオンラインで対応しています。
詳しくはこちらから:日銀 外為法手続
手続きの流れ
- 対象業種の確認・投資スキームの整理
- 届出区分(事前/事後/不要)の判定
- 事前届出書類・添付書類の作成及び収集
- 日本銀行オンラインシステムで申請
- 所管省庁(経産省・財務省など)の審査
- 結果通知 → 投資実行へ
審査期間は原則30日ですが、問題がなければ2週間程度に短縮されることが一般的です。
実務上の落とし穴
しかし、落とし穴もあります。
実は、あまり事業や会社の存在が知られていない非公開会社の場合、
「質問票」というものが経済産業省から送られてくることが多いです。
聞かれることは、大体同じなので、事前にそのポイントを把握し、即座に回答するのが速めに投資を実行することにつながります。
コムーナ行政書士事務所に依頼するメリット
外為法は専門用語が多く、届出の判断を誤ると「違反」とみなされ、場合によっては処分の対象です。
行政書士に依頼することで、
- 指定業種の正確な判定
- 投資スキームに応じた届出内容の整理
- 書類作成の負担軽減
- 日銀オンライン申請の代理
- 省庁との照会対応
- 投資実行までの一貫サポート
これらをワンストップで行うことができます。
外為法手続に強い!当事務所のサポート体制(日本銀行オンライン申請にも完全対応)
実は、この対内直投命令の事前届出は、行政書士の中でもあまり手掛けている人がいません。
オンラインですぐに申請できるようにシステム登録している、という行政書士もあまりいません。
当事務所では、外国投資家や日本企業の皆さまの投資計画に合わせて、以下のサービスを提供しています。
- 対直の事前届出書類作成
- 日本銀行のオンライン申請(電子申請)に完全対応
- 指定業種・判定のご相談
- 投資スキームの事前整理
- 省庁への事前確認のサポート
英語対応も可能で、海外投資家との連絡にも対応しています。
よくある質問(FAQ)
よくいただく質問をまとめていきます。
Q1. どんな投資でも必ず対直届出が必要ですか?
A. いいえ。
指定業種かどうか、取得割合、投資形態などによって「事前届出・事後報告・不要」が分かれます。
まずはご相談ください。
Q2. 審査に30日もかかりますか?
A. 原則30日ですが、通常は問題がなければ2週間前後で承認されます。
また、情報が整っていないと30日を超えてしまう場合も出てきますが、その場合は、一回申請を取り下げることになります。
Q3. 日本銀行のオンライン申請は難しいですか?
A. ライセンスの取得に手間がかかりますし、一回だけの利用ならオンラインを利用しない方が正直楽です。
オンラインで素早く行いたい場合は、当事務所で代理申請が可能です。
Q4. 個人投資家(外国人)でも届出は必要ですか?
A. 個人でも必要です。
ただ、投資内容によって異なりますので個別に確認します。
日本に居住している外国人は、内資扱いになるので、届出不要です。
外為法の投資手続きなら、お任せください
外国から日本企業へ投資する際には、外為法による「対内直接投資(対直)」の届出が必要になる場合があります。
特に指定業種への投資や持株比率の増加には注意が必要で、判断には専門知識が求められます。
当事務所では、日本銀行のオンライン申請を含む手続きを全面サポートしていますので、
外国投資家・日本企業の皆さまはお気軽にご相談ください。