英語教室で英語の先生をやる場合、在留資格は教育…?

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「英語の先生として日本で働きたい! その場合、教育ビザで合ってる?」

「民間スクールと学校で、何か変わる?」

「英語の先生になるのに、必要な書類は?」

人に教える在留資格に「教育」というものがあります。

そして、外国人の方には「日本で英語を教えたい」という方もたくさんいます。

英会話の先生も、日本人に英語を教えるのだから、教育じゃないのだろうか…?

そう思う方もいるかもしれませんが、実はそうとも限りません。

結論から言うと、勤務先が「英語教室」か「学校教育法上の学校」かによって取得すべき在留資格が変わります。

そもそも「教育」ビザとはどのようなものか?

在留資格「教育」は、

小学校・中学校・高等学校・特別支援学校などの学校教育法で定められた教育機関

で教育を行う場合に認められます。
例えば、公立・私立学校の英語教師(ALTなど)は「教育」に該当します。

つまり、片手間で通うような趣味の教室、あるいはアフタースクールのようなものは、

教育についてはこちら:出入国在留管理庁 在留資格「教育」

英会話スクールは「教育」ではない

となると、民間の英会話スクールや塾、英語教室は「学校教育法上の学校」には該当しません。
この場合は「教育」ではなく、在留資格『技術・人文知識・国際業務』を利用することになります。

技術・人文知識・国際業務とは?

これは要するに、ある程度の教養が必要な業務になります。

技術、人文知識、国際業務は別々のジャンルですが、いわゆる専門学校や大卒者以上が一般的にやるような仕事ということで一括りにされています。

たとえば、

  • 技術(いわゆる自然科学を使う業務) ⇒ エンジニア
  • 人文知識(いわゆる人文・社会科学を使う業務) ⇒ マーケッター、営業 
  • 国際業務(語学や外国の感性が必要な業務) ⇒ 通訳・翻訳

といった感じです。

民間企業で英語を教える場合、この中で国際業務という資格に該当することが多いです。

必要な学歴・経歴(国際業務、人文知識)

「技術・人文知識・国際業務」で英語講師をする場合、原則として以下のいずれかが求められます。

  • 大学を卒業していること(専攻は問われないが、語学系だと望ましい)
  • 外国語教育に関する実務経験が3年以上あること

大学を卒業していれば、実務経験は要りません。

英語が母国語でない場合はどうなる?

英語が母国語でない場合は、「国際業務」ではなく「人文知識」になります。

そして、実は、国際業務と人文知識では要件が違います。

人文知識の場合、以下のいずれかが求められます。

  • 大学を卒業していること(大学で学んだことと職務に相当の関連性がある必要あり)
  • 日本の専門学校を卒業していること(こちらはより密接した関連性が認められる必要あり)
  • 外国語教育に関する実務経験が10年以上あること

ちなみに、国際業務、人文知識、いずれの場合でも「日本人が従事する場合と同等以上の報酬を受けること」が求められます。

これは、どの就労系資格でもそうなっています。

(国内雇用保護のためです)

日本語能力も必要?

「技術・人文知識・国際業務」に関して、ガイドライン等では日本語能力が必要かどうかは書かれていません。

つまり、

「どう考えても日本語能力が必要な業務をするのに、一定レベルの日本語能力すらない」

という場合、許可がおりる可能性は一気に低まります。

そして英語の先生にしても英語を教えるだけでなく、

相手は英語がわからないから来ているのですから、日本語でのコミュニケーション能力も必然的に求められます。

目安としては、

  • 国際業務 ⇒ JLPT N2 以上
  • 人文知識 ⇒ JLPT N3 以上

が必要だとされています。

もちろん、日本の大学を出ているなど、特に日本語能力の証明が要らない場合もあります。

国際業務? 人文知識? 表でまとめます

区分母語学歴・経験の要件ポイント
国際業務英語が母国語– 大学を卒業していること(専攻は不問、語学系なら望ましい)または 外国語教育に関する実務経験3年以上大学卒業であれば実務経験は不要
人文知識英語が母国語でない– 大学を卒業していること(専攻内容と職務に相当の関連性が必要)または 日本の専門学校を卒業していること(専攻と職務に密接な関連性が必要)または 外国語教育に関する実務経験10年以上専攻と職務の関連性が重視される

実務上の注意点

  • 雇用契約書には「仕事内容:英語教育」「勤務地:英会話スクール名」などを明記する
  • 採用側は、在留資格に合った職務内容を守らなければならない
  • 日本語能力の有無
  • 場合によっては「資格外活動許可」が必要になる(例:副業で個人レッスンを行うとき)

共通で気をつけるべきこと(国際業務・人文知識)

  • 日本人が従事する場合と同等以上の報酬を受けること
  • 雇用契約内容が明確であること(勤務時間・給与・職務内容など)
  • 雇用先が安定していること(会社の経営状況も審査対象)

「教育」?「技人国」? まとめ

英語を教えるパターンは様々あります。

以下の図を参考にしてください。

勤務先在留資格の種類具体例
小学校・中学校・高校教育ALT、JETプログラムなど
大学・専門学校教授/教育大学講師、専門学校講師
英会話スクール・学習塾技術・人文知識・国際業務ECC、NOVA、個人経営の英語教室など
個人で開業経営・管理自分で英語教室を開く場合

「技術・人文知識・国際業務」申請の必要書類や流れ

申請の種類によって(新規・変更・更新)少しずつ違いますが、一般的には以下の書類が必要です。

(1)申請者本人が用意する書類

書類名ポイント
パスポート・在留カード変更や更新の場合は原本提示
履歴書学歴・職歴を詳細に記載
卒業証明書または学位記学士以上だと望ましい
職務経歴書教育歴や講師経験がある場合に有効
日本語能力を証する書面日本語能力試験でN2以上が望ましい
顔写真(縦4cm×横3cm)申請書に貼付
申請書(在留資格変更許可/更新許可/認定証明書交付)入管公式様式

(2)勤務先(雇用側)が用意する書類

書類名ポイント
雇用契約書または採用通知書職務内容、給与、契約期間を明記
会社登記事項証明書法人であれば必須
決算書の写し経営の安定性を証明
事業内容を説明する資料、勤務先の概要書パンフレット、HP印刷なども可
理由書雇用の理由を合理的に説明
前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表企業カテゴリーの証明に必要

こちらも読みたい:在留資格申請時に問題となる「企業のカテゴリー」とは?

(3)状況に応じて追加される書類

追加書類必要なケース
実務経験を証する書類学歴で要件を満たさない場合、10年以上の経験を証明
税金に関する書類既に在留していて更新する場合
授業カリキュラム・教材サンプル職務内容を補足するために提出を求められる場合あり

詳しくはこちら:出入国在留管理庁 在留資格「技術・人文知識・国際業務」

ちなみにですが、「教育」の場合は学校といういわゆる公的な側面が強い機関が受入先となるので、

実は、「技術・人文知識・国際業務」よりも必要書類が少なくて済みます…

申請の流れ

大まかな流れは以下となります。

  1. 雇用契約締結
  2. 外国人、会社共に必要書類を収集
  3. 入管に申請する
  4. 審査(2ヵ月~4ヶ月)
  5. 許可後、在留カード取得、働くことができる

こちらも読みたい:ビザ申請、どれくらいで結果が出る?

よくある質問(FAQ)

頻度の高い質問をまとめていきます。

Q1. 卒業証明書が日本語や英語以外の言語です。どうすればいいですか?

→ 日本語に翻訳をして、翻訳証明をつける必要があります。

特に証明に資格は必要ありませんので、行政書士が翻訳を兼ねて対応することも可能です。

Q2. 大学を出ていないけど、英語を教える経験は長いです。申請できますか?

→ はい。10年以上の実務経験を証明できれば可能です。

ただし、証明書類を集めるのが難しい場合もあります。

たとえば、以前いた会社が潰れてしまっている場合などは、実際に働いていても証明が難しく、申請が通らない可能性が高いです。

Q3. パートでもビザは取れますか?

→ フルタイム雇用が望ましいです。

もちろん、収入によって生活ができるのなら絶対ダメというわけではありませんが、かなり厳しい申請になるでしょう。

基本的に、契約は正社員でなくても契約社員や派遣社員、あとは業務委託等でも一応は大丈夫とされています。

しかし実務的には、正社員が望ましいのは間違いありません。

教育?技人国?どのビザか迷ったら、行政書士にご相談を

在留資格は、ほんの少しの違いで変わってしまいます。

今回の「英語の先生」もまさにそのようなケースです。

自分が働く場所がどこなのか、を把握すればおのずと答えが出てきます。

最後に本コラムの内容をまとめます。

  • 英会話スクールの先生 → 「教育」ではなく「技術・人文知識・国際業務」(の内の「国際業務」であることが多い)
  • 申請書類は「本人が用意するもの」と「勤務先が用意するもの」に分かれる
  • 学歴か実務経験で要件を満たす必要がある
  • 状況によっては翻訳等も求められる

同じ「英語を教える」でも、在留資格や必要書類は大きく変わります。

事前に正しく準備を進めておくことがスムーズな許可取得につながります。

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