
「仕事を辞めて日本で起業をしたいけれど、どうすればいい?」
「何か手続き上の注意点はあるの?」
「日本人が起業する場合と何が違う?」
日本で働く外国人の中には、「いつかは自分のビジネスを立ち上げたい」と考える方も少なくありません。
しかし、日本での起業にはビザの問題をはじめ、法律や制度面での注意点が多く存在します。
これらを気にかけずに、日本人と同じ感覚で起業準備を始めるのは、実は結構危険なことです。
本コラムでは、現在日本でサラリーマンをしている外国人の方が起業を目指す際に知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。
現在の在留資格で「起業」はできるのか?
まず最初に確認すべきは、自分の在留資格(ビザ)で起業が可能かどうかです。
就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)の場合
一般的なサラリーマンが取得しているこのビザでは、その会社での業務しかできないため、
副業や起業は原則として認められていません。
別の会社の役員になることも制限があります。
つまり、このビザを持ったまま経営者になることはできません。
(ただし、変更申請の手続中、一時的に活動が重なることは大丈夫です)
永住者・定住者・日本人の配偶者等
これらのビザを持っている場合、在留資格の制限がほとんどないため、起業は可能です。
ですから筆者の感想としましては、仮に既に長いこと日本に住んでいるのなら、
〈永住許可取得を取得してから起業〉
というのが、一番安全かつ活動しやすいと思います。
起業したい場合は「経営・管理ビザ」へ変更
現在の就労ビザでは起業ができないため、「経営・管理ビザ」への在留資格変更が必要となるケースが一般的です。
となると、現在の資格を失い、そして新しい資格を得る、というプロセスをたどることになります。
そして、ここに本件の大きな危険性が潜んでいます。
こちらも読みたい:「経営・管理」でお店を開き、シェフはできるか?
「経営・管理ビザ」を取得するための要件
「経営・管理」ビザを取得するには、以下のような基準を満たす必要があります。
(これは最初に取得する場合も、変更の場合も変わりません)
- 事務所の確保(自宅は原則不可)
- 資本金500万円以上の出資(お金の出所は正当かも確認されます)
- 事業計画の妥当性・継続性(事業計画書によって判断されます)
- 実態ある事業の運営(登記だけではNG)
特に、「ペーパーカンパニーではなく、実際に動いている事業」であることが重要です。
登記が間に合わない場合
設立登記が間に合わなくても、ビザ申請をすることはできます。
その場合は、現在ある資料から「会社設立が見込まれる」ことを証明していくことになります。
たとえば、定款や事業所の契約書などを用意して、もう会社設立の準備が始まっていることを説明します。
事業計画書も必須
また、事業計画書ですが、
現在「10ページ前後、文字数6,000字くらい」のある程度ボリュームのあるものが求められる傾向があります。
この事業計画書なども含めて、経営管理ビザでは書類作成の工数が多いです。
外国人の起業のタイミングとステップ
現在サラリーマンとして働いている外国人が起業を目指す際の大まかな流れは次のとおりです。
- ビジネスプランの策定
- 事務所物件の契約
- 法人設立(株式会社や合同会社)
- 経営・管理ビザへの変更申請
- 入管の許可後に事業開始(本格運営)
※ 現在の就労ビザのままで起業準備を進めるのは「慎重に」行う必要があります。特に収入を得る行為は違法になる可能性があります。
ビザ変更で重要なのは退職のタイミング
これは「技術・人文知識・国際業務」等のサラリーマンの資格で日本にいる人の話ですが、
ときどき「起業するからもう仕事を辞めてしまった」という方がいます。
それが申請する前くらいならいいのですが、まだ会社もできていないタイミングで退職している方もたまにいます。
これは、かなり危険ですので、退職のタイミングはせめて法人設立後くらいにしましょう。
本当は、ビザ変更申請直前くらいがいいと思います。
現在持っているビザの活動を3ヵ月以上していないと取消の対象になる
その理由は、
「3ヵ月以上、ビザの活動(たとえばサラリーマン)をしていないとビザ取消の対象になる」
からです。
こちらも読みたい:在留資格の取消? どんなことが問題になる?
持っているビザが取り消され、母国に帰ってくださいと言われるかもしれません。
そうでなくとも、新しく経営管理ビザを申請する際に、この事実が不利に響く可能性もあります。
いずれにせよ、退職するタイミングは専門家と相談した方がいいと、個人的には思います。
注意したいその他のポイント
その他注意したいポイントをまとめていきます。
- 社会保険・税務の対応
起業後は社会保険や税務署・都道府県税事務所への各種届出が必要です。行政書士・税理士等の専門家への相談がおすすめです。 - 日本語の壁
役所や入管での手続きは原則日本語で行われます。書類の不備で申請が通らないこともありますので、日本語サポートが可能な専門家の同行・支援が効果的です。 - パートナー選び
日本人パートナーを迎えて共同で会社を設立する場合も多いですが、安易に相手を選んで、損をするパターンも散見されます。
外国人特有のポイント① 銀行口座はあるか?
会社設立の際には、会社を設立する人の口座に出資金を振り込む必要があります。
つまり、日本での銀行口座を持っている必要があります。
外国人特有のポイント② 印鑑証明は?
日本では法人設立時に、設立時役員の印鑑証明書が求められます。
外国人の場合は当該外国人本国の(あるいは日本にある大使館などの)官憲が作成した署名証明書で済ますこともできますが、
日本にもう住んでいる場合は、印鑑証明を役所で登録し、
印鑑証明書を作成するのが一般的です。
それほど手続きの手間はかかりませんが、これも先に準備しておくといいでしょう。
よくある質問(FAQ)
質問をまとめていきます。
Q1:現在の会社に勤めながら会社を作ることはできますか?
A:会社の設立(登記)自体は可能ですが、現在の在留資格のまま収入を得る活動をすると資格外活動に該当する可能性があります。法人設立後は、速やかに「経営・管理ビザ」への変更が必要です。
Q2:出資金500万円は自己資金でないといけませんか?
A:自己資金であることが望ましいですが、親族からの贈与や借入も可能です。
ただし、その資金の出所や資金の流れを証明する資料(送金記録や契約書など)が必要です。
Q3:自宅兼事務所ではダメですか?
A:原則としてNGです。居住専用物件は「事業用」として認められません。
「事務所契約の物件」であること、看板や電話番号など、事業の実体が確認できる状態であることが求められます。
Q4:会社設立後、経営・管理ビザはすぐに出ますか?
A:申請から許可までは、1~3か月程度かかるのが一般的です。在留資格の変更に関しては標準処理期間が2週間~1カ月と言われてますが、審査には事業計画、事務所、資本金、経歴などが厳しくチェックされるため、それよりも長くなると思ってください。
Q5:法人設立とビザ変更の手続きを一括で頼めますか?
A:可能です。行政書士等の専門家に依頼すれば、会社設立から「経営・管理ビザ」取得まで一貫してサポートが受けられます。ただし、法人設立登記に関しては司法書士の職域です。ですから、チームで行うことになりますので、そこの部分はご理解のほどよろしくお願いいたします。
外国人起業のための準備チェックリスト
項目 | 内容 | 完了チェック |
---|---|---|
①ビザの種類を確認 | 自分の在留資格で起業できるか調べる | ☐ |
② 事業計画を作成 | ビジネスモデル・収支・運営体制を明確に | ☐ |
③ 資本金の準備 | 500万円以上の資金を証明できるよう準備 | ☐ |
③ 事務所を確保 | 自宅以外の事業用物件を契約 | ☐ |
④ 法人設立手続き | 法務局で株式会社等を設立 | ☐ |
⑤ 税務署などへの届出 | 税務署・年金事務所等へ届出 | ☐ |
⑥ 経営・管理ビザ申請書類を準備 | 入管に提出する書類一式を整備 | ☐ |
⑦ 入管へビザ変更申請 | 在留資格変更許可申請を提出 | ☐ |
⑧ 許可後に事業本格開始 | 許可が下り次第、営業開始 | ☐ |
起業成功への第一歩は「正確な情報と準備」から
ビザの不備や計画不足によって、せっかく設立した会社が事実上動かせないケースも多く見られます。
さらには、退職のタイミングを軽く考えて、重大な損失が生じるケースもあります。
無理なく確実に進めるためにも、専門家に早めに相談することが成功への近道です。
当事務所では、外国人の起業支援に関するご相談を随時受け付けております。
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事前準備と専門家の活用がカギ
日本で働く外国人サラリーマンが起業を目指す場合、
ビザの問題や事業の実現可能性など、乗り越えるべきハードルは多いです。
しかし、しっかりとした準備と、行政書士や専門家のサポートを受けることで、そのハードルを乗り越えることは十分可能です。
まずは、自身のビザで何ができるのかを確認し、計画的に起業準備を進めていきましょう。
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