
「自分の国から書類を取り寄せられない場合、帰化はどうなる?」
「難民の帰化ってどうなるの?」
「どういう風に帰化ができる?」
帰化申請は原則的に、本国(元いた国)から公的書類を集めてから申請をする必要があります。
(身分に関する書類;出生や結婚、死亡などを証明する書類がほとんどであり、いわゆる日本でいう戸籍に似た書類の収集です)
しかし、この世界では複雑なことも起きます。
たとえば、本国がない(無国籍者)、あるいは諸事情によって本国で書類を集めることができない、というパターンがあります。
この場合はどうするのでしょうか。
帰化の審査は実際的な判断に即する
帰化に関しては法務局で審査されることになります。
日本の帰化制度に関しては、形式的というよりも実情に即した判断を下すこともあるため、
たとえば必要とされている書類がそろわなければ絶対にだめだ、というわけではありません。
特に国際関係上、多様な人々がいて、書類をそろえるのが事実上不可能な人もたくさんいます。
原則、必要と明示された書類はすべて集める
たとえばですが、以下のケースを考えてみましょう。
「コロナの入国制限で自国へ書類を取りにいくことができない」
しかしこれに関しては、どうしても不可能、というわけではありません。
時間が経てば、やがて入国制限は解除され書類を手に入れることができます。
ですから、コロナを理由にして「書類が集まらない」は認められなかったのです。
例外的に書類を集めなくてもいい人は?
では、例外的に書類を集めなくてもいい人はどんな人なのでしょう。
帰化申請において、本国の必要書類が集まらない場合、以下に該当すれば事情を斟酌してもらえることになります。
- 真にやむを得ない事由があり、
- 申請者本人の責めに帰することができない場合
たとえば無国籍者を例にとってみると、公的書類で身分関係が証明できない場合、
父母や兄弟姉妹の申述書を作成したりして、身分関係を証明していくことになります。
日本の帰化制度は、どのような事情がある人でも要件が整っていて、本当に帰化する気持ちがあるのならば、利用できるようになっています。
ですから、簡単にあきらめずに、何度も考え、問い合わせていく方がいいでしょう。
難民のために本国書類がまったくない場合
インドシナ三国(ベトナム、ラオス、カンボジア)が20世紀後半になり、社会主義体制となった際、
その体制から迫害を受けた人々が日本に逃れてきたことがありました。
(その数は1万人を超える数となっています)
これらの人々のことをボート・ピープルと呼びます。
ボートでやってきたことが由来です。
難民認定者として定住者資格で日本に滞在
その後彼らは難民として、日本で定住者という資格で暮らすことになります。
彼らとしては日本は受け入れてくれた外国であり、在留資格を持って外国人として暮らす、ということが当然の感覚だったのかもしれません。
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ボート・ピープルの子孫は?
問題は、彼らの子孫です。
最初から日本で生まれ、日本語を話し、日本の学校に通った子供たちが、
日本への帰化を望むことが多くなったのです。
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しかし問題は、亡命者であるボート・ピープルの本国での公的書類を発行してもらうことができるか、ということです。
それが現実的に不可能なこともあります。
そこで使われる親族の申述書
そこで本国にいる親族の申述書を作成し、それを公的な身分関係疎明資料として代用することがあります。
しかしそれも不可能な場合は、日本での届出書類を確認したり、本当に最後には提出書類を免除されることもあります。
とにかく、諦めなけば、帰化には近づいていくのです。
国際関係に振り回される個人たちと、帰化
私たち日本人はあまり無国籍の方や難民の方と触れる機会がありません。
ですが、世の中には様々な事情で、国を持たない、あるいは母国と関わることができない、
そんな人々がいます。
帰化に関しては、個人の根源的な人権にかかわる問題となっていますので、
法務局もそこらへんは慎重に判断していきます。
もしも「もう帰化はできないかも…」と思っても、諦めずに、解決策を探していきましょう。