EPAに基づく特定活動ビザとは?日本で国家資格を取りたい

「EPAに基づく特定活動ビザっていったいなに?」

「EPAってそもそも一体どんなもの?」

「どんな注意点や要件があるのだろう?」

ビザのことを調べていくと、聞きなれない言葉に出会うことがあります。

今回のEPAという言葉もその一つで、それはどちらかというと法律や制度の話よりも、国際経済上の話になります。

ますますグローバルな展開がなされていく世界経済。

EPAとビザの関連について、今回は書いていきます。

EPAとは?

それでは前提となるEPAについて書いていきましょう。

国際間での人や物の流動を促す協定

EPA(Economic Partnership Agreement)とは、経済連携協定の略称で、

日本と他の国との間で結ばれる経済協力に関する協定です。

この協定の一環として、特定の分野における人材交流が促進されることがあり、

その一つが特定活動ビザにつながる看護や介護福祉分野におけるEPAです。

物の移動も含まれ、関税などが優遇されるので、非常に国際間貿易をしやすくなります。

よく聞くFTAとは何が違う?

貿易の話となるとFTA(Free Trade Agreement)という言葉を聞きます。

これは自由貿易協定と呼ばれ、関税の撤廃や削減により2国間の物の移動を促す協定となります。

EPAはそれよりももっと包括的な協定であり、FTAはEPAの部分的なものだという感じになります。

項目EPA(経済連携協定)FTA(自由貿易協定)
定義関税の撤廃・削減だけでなく、投資、サービス、知的財産権など、経済活動全般に関するルールを包括的に定めた協定。人の移動も可。主に、物品の関税を撤廃・削減することを目的とした協定。
目的貿易・投資の自由化を促進し、経済関係を深化させることで、両国の経済発展に貢献する。関税障壁を取り除き、貿易を円滑化することで、両国の経済規模を拡大する。
内容関税の撤廃・削減に加え、投資、サービス、知的財産権、政策、人材など、幅広い分野でルールを定める。主に、関税の撤廃・削減に関するルールを定める。
特徴FTAを包含する概念であり、FTAよりも範囲が広い。関税撤廃に特化したシンプルな構造。
日本政府のスタンスEPAをより包括的な概念として位置付け、FTAとの違いを明確にしている。EPAに比べて、日本政府はFTAに関する取り組みは限定的。

こちらも確認:外務省 我が国の経済連携協定

特定活動ビザとEPAの関係

特定活動ビザは、外国人が日本において一定の事情がある際に、特定の活動に従事することを目的とした在留資格です。

これはどちらかといえば、他の在留資格には該当しないが日本に在留を許可すべき場合に、

補完的に用いられることの多い資格でした。

EPAに基づく特定活動ビザの誕生

そんな特定活動の中で、EPAに基づき限定された分野において人材の移動が認められるようになりました。

具体的には、介護分野等人手が足りない分野においてEPAに基づく外国人材の受け入れが始まりました。

やはり目的は人手不足の解消ということになりますね…。

日本で看護師や介護福祉士として働くことを希望する外国人の方々が取得するビザとなります。

対象国は3国のみ

ただこのEPAというのは2国間で結ぶ協定になります。

日本と協定を結んだ国とのみ、このビザは適用されることになります。

現在、インドネシア、フィリピン、ベトナムという三カ国のみということになっています。

ですので、この特定活動ビザを利用する際には少なくとも外国人が上記の国出身かを考えなければなりません。

日本での国家資格者を目指す

この特定活動ビザで日本に来た場合、来てから4年目に介護福祉士や看護師の国家資格を受験することになります。

それに合格しなければ、本邦に引き続き在留することはできません。

つまり、日本で働きながら学ぶ介護福祉士や看護師の養成資格ということになります。

流れとして、

という感じですね。 

EPAに基づく特定活動ビザの要件

EPAに基づく特定活動ビザを取得するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。

以下、必要な要件をまとめていきますね。

国籍

当たり前ですが、インドネシア、フィリピン、ベトナムのいずれかの国籍を有していることが必要です。

資格

実は日本での資格は「これから取るもの」ですので、関係ありません。

しかし外国人の母国での専門学校の卒業や資格を有していることが必要になる場合があります。

日本語能力

一定レベルの日本語能力を有していることが必要になります。

具体的には日本語能力検定(JLPT)のN3程度が必要になります。

こちらも読みたい:JLPTとは

入国時に必要な能力は出身国によって異なるので、都度チェックしていきましょう。

研修修了

EPAに基づく特定活動ビザで日本に来る前に、事前に日本語研修を受ける必要があります。

雇用契約

日本の介護施設等と雇用契約を結んでいることも必要です。

こちらは専門のマッチングサービスがありますので、それを活用したいですね。

EPAに基づく特定活動ビザのメリットとデメリット

最後にメリットとデメリットをまとめていきましょう。

メリット

やはり日本としては人材不足の解消であり、

外国人としては母国よりも治安のいい日本で生活することができるという点になります。

国家資格まで取得できるのですから、たとえば特定技能などと比べても安定したキャリア形成をすることができます。

また「介護」や「特定技能1号」への資格変更も容易になります。

こちらも読みたい:在留資格「介護」とは

デメリット

ミスマッチはどうしても起こりますし、外国人の生活面での支援や勉強時間確保を考慮するなど、

どうしても通常の日本人を雇うよりもやるべきこと、考えるべきことは多くなります。

外国人の心情や環境、など総合的に考えていく必要がありますね。

メリットデメリット
日本側日本側
*(主に) 介護人材の不足を解消できる* 日本語教育や生活支援体制の構築が必要
* 高度な専門知識を持つ人材を確保できるかもしれない* 文化の違いによるコミュニケーションの円滑化が課題となる場合がある
* 国際的な人材交流を促進できる* 資格取得のための支援を制度化する必要がある
* 介護サービスの質の向上に繋がる* 労働条件や待遇に関するトラブルが発生する可能性がある
外国人労働者側外国人労働者側
* 安定した収入を得ることができる* 日本語能力が求められる
* 日本の社会で働く経験を積むことができる* 日本の文化や習慣への適応が求められる
* 他の資格への変更が容易になる* 家族との離別やホームシックになる可能性がある
* 日本の介護の知識や技術を習得できる* 日本での生活が長期化する場合は、永住権取得や帰国など、将来の計画が必要となる

また、せっかく介護福祉士や看護師を取っても、日本に残ってくれるかわからない、といったこともあります。

冒険的な制度ですが、人材不足解消や国際交流に寄与しているのは間違いないでしょう。

EPAを活用して、日本の人材不足解消へ

EPAに基づく特定活動ビザは、外国人が日本の介護業界で活躍するための重要な制度です。

しかし、ビザを取得するためには、いくつかの要件を満たす必要があるほか、日本での生活や仕事には様々な課題も伴います。

外国人の出身国ごとにやるべきことも変わります。

ビザ取得を検討されている方は、専門家にご相談することをおすすめします。

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