
「技能実習から特定技能に移行できる?」
「そもそも両制度は何が違うの?」
「必要な手続きや書類は具体的にどんなもの?」
技能実習から特定技能への在留資格変更は、日本で働きたい外国人にとって大きなキャリアの転機となります。
特定技能と技能実習とは性質が異なる制度であり、受けられる恩恵も変わってきます。
この変更にはいくつかの要件や注意点がありますので、以下に分かりやすく解説します。
特定技能、技能実習とは?
まずは両制度の紹介からさせていただきます。
在留資格「特定技能」の概要
特定技能はいわゆる人手不足の分野において、ある程度の技能水準を持っている外国人材を受け入れる制度です。
日本における深刻な労働力不足を解消するため設立されました。
従来の在留資格との決定的な違いは「現場で働く人材」ということです。
つまり、ある意味では単純労働の一部容認とも言えます。
在留資格は、たとえば比較的現場に近い資格である「介護」でも、認められているのは専門性が高い人材です(具体的には介護福祉士資格保持者)。
しかし特定技能は本当に現場仕事で働くことになります。
在留資格「技能実習」の概要
技能実習は、特定技能とは違い、もっと現場的な仕事になります。
特定技能はある程度の技能水準(つまりは該当業務において即戦力になれるほど習熟しているレベル)が求められるのに対して、技能実習は今から技能を学ぶ人が利用する資格になります。
行う業務もそれほど難しいものではなく、基本的には本邦でアルバイトの人が行うような単純作業が多いです。
こちらは目的が、「仕事を通じての国際的な人材育成への貢献」という名目になっています。
つまり、人生の確保が目的でないということです。
以下、主な特徴をまとめてみました。
項目 | 特定技能 | 技能実習 |
---|---|---|
目的 | 人手不足の解消 | 途上国への技術移転 |
対象となる人材 | 一定の専門性・技能を有する外国人 | 技能・技術を習得したい外国人 |
受け入れ分野 | 12の特定産業分野(製造業、建設業、介護など) | 91職種167作業(農業、漁業、建設など) |
在留期間 | 最長5年(2号移行で無制限) | 最長5年 |
主な特徴 | 即戦力として活躍、2号は家族の帯同可 | 技術習得が目的、家族の帯同不可 |
ちなみに、技能実習は2030年までに育成就労という別の制度に変わります。
こちらも読みたい:育成就労と技能実習の違い
技能実習⇒特定技能への変更が可能な条件
特定技能に移行するためには、当たり前ですが、定められた条件を満たす必要があります。
ひとつひとつ確認していきましょう。
技能実習2号以上を「良好に」修了していること
原則として、技能実習2号を良い成績で修了し、修了証明書が発行されていることが条件です。
技能実習1号で終了した場合は、特定技能に変更することはできません。
(2号よりも本邦での習熟度が高い3号は、無論移行が可能です)
「良い成績」かどうかは、試験や評価書により証明することになります。
特定技能分野での技能実習がされていること
技能実習の内容が特定技能に該当する14分野のいずれかと一致している必要があります。
例として、技能実習で建設業に従事していた場合、建設分野の特定技能に進むことができます。
こちらは完全に一致していなくても関連性が認められれば移行することができます。
職業能力や日本語能力は?
原則として特定技能を取得するには、日本語能力試験(JLPT)のN4以上、またはそれに相当する基準を満たしていることが必要です。
技能実習を修了していると、この日本語能力の証明が不要になります。
こちらも読みたい:日本語能力試験(JLPT)とは?N4の難易度は?
また職種ごとの能力試験もあるのですが、そちらも不要になります。
技能実習2号(つまり3年間の技能実習において)を続けたということで、それらの能力は一定水準以上であることが担保されるからです。
手続きの流れ
技能実習から特定技能への変更には以下の手続きが一般的かと思われます。
正直、あまり新しく呼ぶ場合と変わりません。
新しく雇用契約を締結
特定技能で働くための雇用契約を新たに結ぶ必要があります。
雇用条件が適正であるか、特定技能の基準を満たしているかを確認します。
こちらも細かな規定がありますので、チェックしていきたいですね。
具体的には以下のようなポイントがあります。
- 雇用期間
- 就業場所
- 従事させる業務の内容
- 所定労働時間
- 休日
- 報酬
- 割増賃金
- 待遇
- 一時帰国時の有給休暇取得について
- 帰国時の旅費の負担について
- 生活と健康のサポートについて
- 派遣先(必要な場合)
- 保証金や違約金の禁止
- 退職に関する事項
- 分野別に規定された基準に関する内容(それぞれの職種ごとに必要な事項)
在留資格変更許可申請
技能実習から特定技能への変更は、「在留資格変更許可申請」を地方出入国在留管理局に提出することで行います。
- 在留資格変更許可申請書
- 技能及び日本語能力水準を証する書類(技能実習計画書の写しなど)
- 雇用契約書の写し
- 特定技能外国人の報酬に対する説明書
- 技能実習2号修了に関しての評価調書
- 雇用先企業の適正性を証明する書類(会社概要、納税証明書など)
- 在留カードや有効なパスポート
などなどが必要になります。
こちらもそのときの状況によって異なりますので、一度専門家と相談することをおすすめします。
特定技能取得に一般的に必要な書類:特定技能総合支援サイト
審査と結果通知
入管で審査が行われ、許可されると新しい在留カードが発行されます。
そして特定技能、つまりはより長く日本にいることができる資格で在留することができるようになります。
審査期間は通常1〜2か月程度です。
資格変更における留意点
技能実習から特定技能への移行では、以下の点を意識しておきましょう。
雇用先企業の適正性
特定技能では、雇用主が労働基準法や入管法を遵守していることが求められます。
不適正な企業の場合、申請が却下される可能性があります。
仮にある会社が「過去に技能実習でやらかして(計画と違う業務に従事させた等)行政処分が下された」場合、5年間は特定技能の受入れもすることができなくなります。
また納税状況なども気をつけたいですね。
変更申請中の在留期限
技能実習から特定技能に資格の変更をしようとしている際に期限が切れることもあります。
実はこの場合、4か月は「特定活動」ビザによって日本に滞在することができます。
その間就労することもできます。
4か月あれば資格の変更には十分な期間ですので、安心ですね。
これは注意点というよりも、知っておいてほしいこと、という感じです。
支援体制の整備
特定技能では、雇用主または登録支援機関が外国人労働者に対して生活面や職場でのサポートを提供する義務があります。
この支援体制が整備されていない場合、入管での審査が通らない可能性があります。
技能実習とは全然違う制度ですので、新たに登録支援機関を探したり、特定技能に沿った内容で計画を策定する必要があります。
新しく支援体制を再構築しなければならない、ということは意識しておきましょう。
こちらも読みたい:特定技能における登録支援機関とは?
来てくれた外国人にずっと日本で働いてもらうために
技能実習から特定技能への変更は、外国人が日本での就労を継続するための重要なステップとなります。
ただし、要件や手続きには独特の問題がつきまといます。
技能実習は特定技能を意識して作られた制度ではないため、あまりスムーズな移行とはいえない現状があります。
(この点、育成就労制度には期待ができますね)
特定技能への移行をスムーズに進めるために、必要な書類や条件を事前にしっかり確認し、準備を整えていきましょう。
弊所では外国人サポートの行政書士として、こうした手続きの手助けを行っています。
もし変更が不安なら、あるいはよくわからないことがあったら、専門家に頼ってみませんか?
いつでもご連絡お待ちしております。