永住許可と帰化、要件の違い

「永住許可と帰化って何が違う?」

「それぞれの要件を知りたい」

「帰化すると具体的にどんなことができる?」

永住許可と帰化の違いについてご相談をいただくことがあります。

どちらも日本で長期的に生活をするための重要な手続きですが、その要件には大きな違いがあります。

本コラムでは、永住許可と帰化の基本的な違いをわかりやすく説明します。

永住許可とは?

永住許可とは、日本における在留資格の一つで、期間の制限がない在留を認めるものです。

この在留資格を取得することで、就労や生活の自由度が上がります。

具体的には、在留資格の更新が要らなかったり、(不法でない限り)どのような仕事をするかも自由となります。

いわば、最上級の在留資格と言えます。

ただしその分、要件も厳しくなっています。

居住年数

日本に10年以上引き続き在留していることが必要になります。

引き続き、ということはその間基本的に日本を生活の拠点とするということを意味します。

実務上は、「3ヶ月以上連続で外国に暮らしている」or「年通算5ヶ月以上外国にいる」とこの【引き続き】に抵触する可能性大です。

(こちらの要件は、現に持っている在留資格により年数が緩和されることがあります)

素行は善良か

法律を遵守し、納税義務や社会保険料をしっかり支払っているか、ということです。

軽微な犯罪の場合は許してもらえることもありますので、それぞれのケースでの個別具体的な判断が必要です。

生計は立てられるか

安定した収入や資産を持ち、生活基盤が整っていることも条件のひとつです。

特に家族がいる場合は家族の分まで考慮されることになります。

とはいえ、それほど高額な収入は求められませんのでご安心ください。

国益となるか

素行善良と重なりますが、申請が日本社会にとって有益と認められることが必要です。

(過去の違反歴や犯罪歴があると難しくなります)

税金は納めてくれるか、あとは高度な技能や知識を持っているか、ということも考慮の対象となります。

(実際にいわゆる「高度専門職」や日本に特別な貢献をした人などは、必要な居住年数が大幅に少なくなります)

こちらも読みたい:永住許可の要件は?

帰化とは?

帰化は、日本国籍を取得し、日本人としての権利を得る=日本人になる手続きです。

詳しくはこちら:法務省 帰化許可申請

これは、在留資格とは大幅に性質が違います。

在留資格は「外国人として」日本に滞在できる権利ですが、帰化は日本人になります。

故に滞在という言葉も不適切になります。

永住許可と異なり、外国籍を放棄することが原則必要です。

もちろん帰化も要件は厳しいです。

居住要件

日本に5年以上継続して住所を有していることが必要です。

(意外なのは、永住許可の10年より短いことですね)

能力要件

18歳以上であり、法律上の行為能力があることが必要になります。

しかし日本人の親がいる場合、その人の代理申請によって要件が緩和されます。

素行要件

犯罪歴がなく、納税などを適切に行っていることが必要になります。

こちらは永住許可とほぼ変わりませんね。

生計要件

安定した収入や資産があることが必要になります。

もちろん両親の関係で未成年の帰化ということもありますから、

本人だけではなく、家族や親族の収入や資産状況を見て判断されることになります。

日本語能力

日本人になるのだから、日本語は必須です。

日常生活で困らない程度の日本語能力があることが必要になります。

大体小学校低学年レベルの基礎的な日本語能力は最低限求められます。

読み書きのテストが行われる場合もあります。

国籍喪失要件

原則として、帰化により元の国籍を喪失することが必要になります。

日本国籍だけになることが求められます。

(日本は多重国籍を否定しているため)

思想要件

日本国憲法を尊重し、暴力的な手段で政府を破壊する意図がないことも求められます。

とはいえ、そういった内面を判断するのは難しいため基本的には不法あるいは危険な団体との関係性で判断されることになります。

たとえば、暴力団員であった、あるいは暴力団との付き合いがある、などの場合は帰化ができなくなる可能性が高いです。

他にも危険思想を待つ政治団体なども気をつけましょう。

永住許可と帰化の主な違い

最初にも話しましたが、両者はまるで別々の制度です。

確かに「日本にずっと住むことができる」というのは変わりませんが、その内実は全然違います。

永住許可と帰化の違い【図解】

項目帰化永住許可
国籍日本国籍を取得(日本人になる)外国籍のまま
身分日本人外国人
パスポート日本のパスポート元の国のパスポート
戸籍作成される作成されない
参政権ある(選挙権・被選挙権)ない
在留期間の更新不要不要(ただし、在留カードの更新は必要)
国外退去原則としてない強制退去の対象となる場合がある
申請先法務局出入国在留管理局

ちなみに、永住許可は根拠が入管法であるのに対し、帰化は根拠が戸籍法となります。

その前提からして、別の制度だとわかりますね。

どちらを選ぶ

永住許可は、現在の国籍を維持したまま日本で主として生活し、日本との関わりの中で人生を豊かにしたい人に向いています。

一方、帰化は日本国籍を取得することで、選挙権や日本のパスポートなど、さらなる権利を得たい方に適しています。

特に政治への関与は、一部地方公共団体では限定的に認められているにせよ、

外国人にはない強大な権利です。

こちらも読みたい:帰化と在留資格、何が違う?

帰化か永住許可か迷ったら

ご自身のライフプランや価値観を考え、どちらが適しているか検討することが大切です。

それぞれの手続きごとに要件や難易度、審査期間も変わります。

「どの資格あるいは手続きが、自分の人生を豊かにしてくれるのか?」

行政書士として、永住許可や帰化の手続きに関するご相談に丁寧に対応しています。

ご不明な点があれば、ぜひお気軽にご相談ください。

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