みなし再入国許可とは?日本への再入国をスムーズにする制度

「みなし再入国許可ってなに?」

「どんな条件なら適用される?」

「そもそも再入国許可はなぜ必要?」

実は外国人が日本を出て再入国する際に、その権利が保障されているものではありません。

再入国の許可が必要になるのです。

しかしそれでは手続き上非常に大変になるため、「みなし再入国許可」というものが認められています。

今回はそれについて書いていきます。

そもそも再入国許可とは?

日本に滞在中の外国人が、一時的に日本を出国し、その後再び日本に入国する場合、

通常は「再入国許可」という手続きが必要になります。

つまり再入国はある程度制限される、ということになります。

森川キャサリーン事件

法律を勉強した人ならばほとんど知っているだろう有名な判例があります。

森川キャサリーン事件です。

出国前の手続きに必要な指紋捺印を拒否したことで再入国許可がおりず、それが訴訟へと発展しました。

判決文にはこう書かれています。

我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものでないことは、当裁判所大法廷判決(最高裁昭和二九年(あ)第三五九四号同三二年六月一九日判決・刑集一一巻六号一六六三頁、昭和五〇年(行ツ)第一二〇号同五三年一〇月四日判決・民集三二巻七号一二二三頁)の趣旨に徴して明らかである。

平成4年11月16日 最高裁判決

争点は憲法22条だった

なぜ外国人の再入国が問題になったかといえば、憲法22条に以下の文言があったからです。

何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

日本国憲法第22条

何人もということはすべての人は、ということですから、これはおかしいとなったわけですね。

しかし、判決ではこれが否定されています。

何人も、というのは「どんな日本人も」ということだったということですね。

法学上、外国人は認められた範囲内で日本にいることを許可されている

これはつまり、外国人に保障されている権利が限定的であることを示しています。

当然に再入国できるのではなく、日本国(法務大臣)が許可した範囲内でしか再入国の自由がない、ということです。

みなし再入国許可とは?

再入国をするのも許可が必要ということで、原則的に手続きが必要になります。

しかし、「みなし再入国許可」という制度を利用すればこの手続きを簡素化できるのです。

1年以内に戻ってくるなら再入国許可は不要という制度

一定の条件を満たす外国人の方が出国後、1年以内に日本に再入国するのなら、

原則として再入国許可の申請が不要となる制度です。

「すぐに戻ってくるのなら特別な手続きは要らないよ」という特例となります。

どんな人がみなし再入国許可の対象になる?

それではその条件とはいったいなんなのでしょうか。

以下、列挙していきます。

  • 有効な旅券と在留カードを所持していること
  • 在留期間が3ヶ月を超えていること(短期滞在を除く)
  • 出国から1年以内に再入国すること

これらの条件をすべて満たしていれば、みなし再入国許可の対象となります。

みなし再入国許可の手続きは?

通常の再入国許可とは違い、特に特別な手続きは必要ありません。

出国時に「再入国出国記録」という書類の「意思表示」欄、

「一時的な出国であり、再入国する予定です。」にチェックを入れるのみとなります。

通常の出国とほとんど手続き上の労力は変わりません。

みなし再入国許可の注意点

もちろんこちらの制度は非常に限定的な場面で用いられる制度であるため、注意点もいくつかあります。

最後にそれをチェックしていきましょう。

適用されない者

以下はみなし再入国許可が適用されない者として、法務省が指定している者となります。

(1)在留資格取消手続中の者(日本に滞在できる資格が消える者)
(2) 出国確認の留保対象者(罰金などにより出国が制限されている者)
(3)収容令書の発付を受けている者(入管に収容される者)
(4) 難民認定申請中の「特定活動」の在留資格をもって在留する者(難民申請をしている者)
(5)日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあることその他の出入国の公正な管理のため再入国の許可を要すると認めるに足りる相当の理由があるとして法務大臣が認定する者(その他危ない者)

参考:出入国在留管理庁 みなし再入国許可

確認すればわかりますが、一般常識で考えて「それはさすがにだめだよね」という人々です。

これらの人々は通常の再入国許可を受けなければなりません。

こちらも読みたい:在留特別許可とは?

在留資格の期限にも注意

仮に今持っている資格の期限が1年以内に切れるのならば、みなし再入国許可が及ぶのは期限内までとなります。

在留資格の期限にも注意しましょう。

日本に戻ってこれなくなる可能性もあります。

こちらも読みたい:期限切れには注意!在留資格の更新につき

みなし再入国許可というスムーズな制度

みなし再入国許可は、日本に滞在する外国人にとって、非常に便利な制度です。

日本への再入国を予定している方は、ぜひこの制度を活用して、スムーズな出入国を実現しましょう。

しかし出国前に必ず、以下の点は確認しておきましょう。

  • 在留資格の期限
  • みなし再入国許可が適用される者か

冒頭にも述べたように外国人の再入国は「当然に認められている権利」ではありません。

取り返しのつかない事態になる前に、今一度気を引き締めていきましょう。

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