AV新法って何?AV契約の注意点

「AV新法って、そういえばどんなもの?」

「何が変わったの?」

「新法制定にはどんな背景があるの?」

2022年に施行された「AV出演被害防止・救済法」(以下、AV新法)。

とはいえ特にAV関係者でないのなら、それほど内容を確認してはいないかもしれません。

ただ、これは以前書いたフリーランス新法と同じで、契約関係における弱者の保護を目的としています。

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つまり、これからもこういう「契約関係の是正」が行われるのは傾向的にありえる、ということです。

そもそもAV新法とは?

まずはAV新法がどんなものかということから始めていきましょう。

出演者(主にAV女優や男優)の保護のための法律

AV出演に関連する被害を防止し、出演者の権利保護を目的とした法律です。

具体的には性行為の強制の禁止、契約、公表等の細かなプロセスの中でひとつひとつ規制をしていく内容になっています。

背景は民法の成人年齢の引き下げ

民法が改正されて成人年齢が引き下げられました。

18歳でも私法上の契約は大人として扱われることになります。

となると、やはりよい大人ばかりではありませんから、高校を卒業したばかりの若い子に巧みな言葉でAVに出演させようとする大人も出てきます。

それはさすがにまずい…! ということで急遽AV新法は作られました。

大きく変わるAV業界

この法律の施行により、AV制作や出演契約に関するルールが大きく変わりました。

以下、それを述べていきます。

AV出演者への事前説明と同意

とにかくしっかりとした合意形成が求められます。

詳細な説明と書面による合意が必要

出演者が内容を十分理解した上で契約を結べるよう、事前に詳細な説明をしなければなりません。

書面による同意を得ることが義務付けられています。

出演者側がわかるように丁寧に

契約書の内容だけでなく、撮影予定の映像の性質や公開方法についても明確に説明した方がよいでしょう。

またなるべく平易な言葉で、業界のことがわからなくても伝わるようにするのがベターです。

特徴的なのは出演作品ごとに契約が必要なこと

非常に特徴的なのは、AVの作品ごとに契約が必要な点です。

ひとつひとつの作品での適正な手続きと合意が必要となります。

AV撮影後の公開前確認期間

撮影終了後から4カ月間、出演者には映像の公開に関する確認期間が設けられています。

AV出演者の熟慮期間

つまり、撮影終了後4ヶ月間は公表せずに、出演者に本当に公開していいか考えてもらう期間ということになります。

もちろん拒否されたらNG

確認期間内に出演者の同意を得られない場合、映像を公開してはなりません。

スケジュールに余裕を持ち、確認作業を進める必要があります。

AV出演者に不利な条項の無効

契約書にAV出演者に不利な条項を書いたとしても、それは無効になりました。

損害賠償や違約金の予定は無効

撮影日にバックれたら違約金払え、というような内容は無効とされます。

契約内容もよくわからないまま、契約を結んでしまった出演者を保護するためです。

場合によっては脅迫のように、「お前、出なかったらわかってるよな…」と言ってくる業者もいるかもしれません。

制作者側が有利な条項も無効に

制作者側の損害賠償を免除する、といった条項も無効とされます。

制作者側が強者であり出演者側が弱者である、という構図が基本的ですからね。

制作者側が不利すぎるとの指摘も

出演者を保護しすぎるあまり、制作者はコストをかけてAV制作してもそれが無駄になるリスクを常に抱えることになります。

それにより制作会社は信用できる出演者のみに仕事を頼むことになり、AV業界においてはむしろマイナスなのでは、という指摘もあります。

民法改正後、契約関係是正の傾向が

私はフリーランス新法のことも、業務提携をする当事者として見ていました。

そしてAV新法も今回確認してみると、同じ論理が流れていることに気がつきました。

今やフリーランスやそれに準ずる人は搾取されやすい

昨今、雇用ではなくフリーランスで働く人が増えました。

個人事業主で、自由に自分の好きなことで生きていく、といえば聞こえはよいのですが、

やはり多くの個人事業主は残念なことに弱者側であり、ひどい場合には適正な報酬も支払われずアルバイトの方がまし、ということもあります。

そこに民法改正(成人年齢改正)が加わる

成人年齢が引き下げられましたね。

それは若い子たちの権利が生まれた分、責任が増したということです。

まだあまり世間を知らない若い子たちが不当な被害を被らないように、問題が起こりやすい(あるいは起こっている)分野では規制が進んでいる、という感じだと私的に思っています。

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